兵庫県のキッチンカーの基準は、「食品衛生法基準条例に基づく施設基準」という文書を読むしかないと書きましたが、兵庫県のホームページには、丹波健康福祉事務所が作成された「(丹波管内)自動車営業・露店営業について」というページがあります。そこには、上記の文書を読むよりも分かりやすく、施設基準や必要書類が書かれていますので、キッチンカーのモデル図面と一緒にご紹介したいと思います。
|丹波管内のキッチンカーの モデル図面
こちらが、「(丹波管内)自動車営業・露店営業について」のページにある、キッチンカーのモデル図面を私がCADで真似をして描いたものです。
文章だけよりも、かなり分かりやすいですね。
兵庫県の生活衛生課に問い合わせたところ、他の兵庫県の保健所(神戸市、姫路市、尼崎市、明石市、西宮市の5市を除く)でも、基準はほぼ同じであると確認しましたので、兵庫県でキッチンカーを営業しようと考えておられる方には、大いに参考になると思います。
このページを直接見たいという方は、兵庫県のホームページから入って、以下の手順でページを開いてご覧ください。
また、最新の情報は必ずこちらから取得してください。
引用:兵庫県ホームページ 2023年12月1日
ホーム→ 食・農林水産 → 食と農 → 食の安全・安心 → (丹波管内)食品衛生法に基づく営業許可・営業届出の手続きにつて → (丹波管内)自動車営業・露店営業について
この記事では、1つずつの設備について詳しく説明をしていきます。
|冷蔵設備
冷蔵設備は記載の通り、クーラーボックスでもかまいません。ただし、取扱品目によっては、冷蔵庫もしくは冷凍庫を設置するよう指示があるかもしれません。温度計は必ずつけて下さい。外付けの温度計がついている一般飲食店用のコールドテーブルなどであれば、外から庫内の温度が確認できて便利ですが、高価ではあります。
家庭用冷蔵庫やクーラーボックスを使うのであれば、市販の温度計を中にいれ、使用中は10℃以下に温度を保つようにしましょう。
|手洗い設備、洗浄設備
いわゆるシンクと水栓のことです。
シンクは手洗い用と食品や器具の洗浄用とに分けます。
シンク上の黒い楕円は水栓です。
準固定施設と認められたキッチンカー以外は、この水栓に決まった基準はありませんが、準固定施設の場合は、再汚染防止の構造になっている水栓を取り付けなければいけません。といいますか、準固定施設と認められるには、再汚染防止構造の水栓が許可要件となります。
「準固定施設」とは、兵庫県独自の施設基準だそうです。少なくとも大阪府ではこの基準は見受けられません。準固定施設と認められると、兵庫県内では一般飲食店と同様の食品提供が認められます。
では、実際にどのようなキッチンカーであれば、「準固定施設」と認められるのでしょうか?
「準固定施設」と認められるためには、次の5つの条件全てを備えたキッチンカーにする必要があります。
- キッチン内は食品を取り扱う量に応じた十分な広さがあり、立ち作業ができること。
- 床面、内壁、天井は必要であれば不浸透性(液体が浸透しない性質)材料を使用し、清掃しやすい構造になっていること。
- 容量200リットル以上の給水・排水タンクを有すること。給水タンクは2個以内(200リットル1個や100リットル2個など)に収める事。
- 流水式手洗い設備の水栓は、洗浄後の手指の再汚染が防止できるもの(センサー式、自動止水式、ハンドルレバーなど)であること。
- 食品を10℃以下で保存するために電気冷蔵庫などを設置し、温度が簡単に確認できるように温度計を備えること。(バッテリーによる給電などで、移動中も庫内温度を10℃以下に保つこと)
|給水タンク、排水タンク
よくある、給水タンクは車の上部に、排水タンクはシンク下に設置するというのでもかまいません。こちらの図面では、分かりやすいように給水・排水タンクをシンクから独立させて描いてあります。
給水・排水タンクは営業の種類によって、求められる容量が変わってきます。
表にはしてみましたが、大まかな条件しか設定されていませんね。
こちらも、キッチンカーで提供するメニューや品目数、調理工程によって、個別に管轄の保健所に相談してみる他はないでしょう。
排水タンクは、給水タンクと同じ容量のタンクが必要です。
準固定施設にする場合には、それぞれ200Lのタンクを用意しなければなりませんし、さらに、給水タンクは2個以内に収めないといけないという決まりがあります。
つまり、200Lタンク1個にするか、分けるのであれば、100Lタンク2個などにする必要があるということです。
|換気設備
丹波健康福祉事務所に問い合わせたところ、換気設備は換気扇でなくても良いとのことでした。こちらは大阪府の基準と同じですね。
つまり、窓でも良いということです。その場合は必ず網戸をつけて下さい、ということでした。
ただし、ここで注意点ですが、1ナンバーや4ナンバーの車を8ナンバーにしたいなど、構造変更検査をして加工車としての登録を予定されている方、もしくはいずれ8ナンバーの加工車にしようと考えておられる方は、はじめから換気扇にしておきましょう。構造変更検査の要件では、窓では換気設備とみなされません。
|容器等保管設備
常温で保存可能な材料や、食器、調理器具などを収納する戸棚などのことですね。兵庫県の「食品衛生法基準条例に基づく施設基準」の施設の構造及び設備の項で、「じん埃、廃水及び廃棄物による汚染を防止できる構造又は設備並びにねずみ及び昆虫の侵入を防止できる設備を有すること」とありますので、戸棚はぴったりと閉まる扉や引き出しが必要になってくるでしょう。また、箱状の容器を保管設備にする場合も、蓋は必須です。
|販売台
販売台に特に定めはありませんが、「食品衛生法基準条例に基づく施設基準」の営業に共通する基準には、キッチンカー内の設備は「衛生的な作業を継続的に実施でき」、「食品の取扱量に応じた十分な広さが必要」とあります。こちらも、文言だけでは、具体的なところは分かりませんので、ご自身のアイデアが固まったら、管轄の保健所に聞いておきましょう。
|調理台
こちらも、販売台と同じように、衛生的で十分な広さが求められます。
給排水タンクが40L、80Lのキッチンカーは、あつあつが大前提ですので、コンロなど調理器具が必要になってきます。
ここで気を付けたいのが、熱源です。プロパンガスを考えておられる方は、ガスを充填してくれる販売業者さんを前もって探しておきましょう。
プロパンガスは移動させて使用するとなると、色々と規制がありますので、それを嫌気して(手間のわりにお金にならない)、プロパンガス販売を謳っていても、キッチンカーやキャンピングカーなどで使用するガスの充填をお断りされているところが多いからです。
詳しくは、こちらの記事をお読みください。
プロパンガスを使う時に気をつけたい法律 - 行政書士|長尾真由子事務所 (shosinagao.com)
|運転席と作業場の区画
運転席とキッチンの間は、壁などを設けて区切る必要があります。
「食品衛生法基準条例に基づく施設基準」にも、「食品等への汚染を考慮し、公衆衛生上の危害の発生を防止するため、作業区分に応じ、間仕切り等により必要な区画がされ・・・」と書かれています。
ただし、「簡易な営業(そのままの状態で飲食に供することのできる食品を食器に盛る、そうざいの半製品を加熱する等の簡易な調理のみをする営業のこと)であって、従業員以外が容易に立ち入ることができない構造であれば、区画されていることを要しないこととすることができる」ということです。
また、簡易な営業の場合は、1次加工所(仕込み場)の確保も免除される可能性があります。
|ゴミ箱
ゴミ箱は不浸透性(表面に付着した液体が裏面に浸透しない性質のこと)で、汚液や臭いが漏れないようなものを選んで下さい。その為にも蓋は必須ですね。
また、「食品衛生法基準条例に基づく施設基準」には、ゴミ箱は十分な容量と掃除のしやすさも求められています。
|まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
さて、いかがだったでしょうか?
文章だけでなく、図面も合わせて見ると、とても分かりやすいですね。
上の図面はあくまで一例ですので、ご自分のキッチンカーにあてはめて考えてみてください。
また、換気設備のところでも書きましたが、構造変更検査を受けて8ナンバーの加工車への変更を予定されている方は、そちらも要件がありますので、以前書いた記事も参考にしていただければと思います。
8ナンバーへの変更は面倒? - 行政書士|長尾真由子事務所 (shosinagao.com)
この記事が、兵庫県(神戸市、姫路市、尼崎市、明石市、西宮市以外)でキッチンカーの営業許可を取得したいという方の参考になれば幸いです。
また、この記事で頻出の「食品衛生法基準条例に基づく施設基準」については、前回の記事で詳しく書いています。合わせてお読みいただければ兵庫県の営業許可基準をより理解できると思います。
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